
コラム
障害福祉事業所が外部専門家を選ぶときに確認したい「仕事の進め方」
専門性や料金だけでは分からないことがある
障害福祉事業所を運営していると、指定申請や変更届、加算、労務、会計などについて、行政書士、社会保険労務士、税理士などの外部専門家へ相談する場面があります。
依頼先を探す際には、資格、専門分野、実績、料金などを確認するのが一般的です。これらはいずれも重要な判断材料です。
一方、実際に業務が始まってからは、説明の仕方や連絡方法、予定外のことが起きたときの対応によって、事業所側の負担が変わることがあります。
継続的に相談する相手を選ぶのであれば、「何を知っているか」だけでなく、「どのように仕事を進める相手なのか」も確認しておくことが大切です。
資格が同じでも、仕事の進め方は同じではない
同じ資格を持つ専門家であっても、得意分野や実務経験は異なります。
障害福祉制度を中心に扱っている人もいれば、相続、建設業、労務、税務など、別の分野を中心に扱っている人もいます。説明の詳しさ、連絡の頻度、電話やメールの使い方、事業所側へ求める作業の範囲も同じではありません。
また、知識や経験が豊富であっても、質問しづらかったり、説明を十分に理解できなかったりすれば、必要な情報を専門家へ伝えられないことがあります。
一定の専門性があることを確認したうえで、仕事の進め方や相談のしやすさが、自分たちの事業所に合っているかも見ておく必要があります。
契約前に確認したい5つのこと
1. どこまでが依頼範囲に含まれているか
最初に確認したいのは、専門家と事業所のどちらが、何を担当するのかという点です。
例えば、書類の作成だけを依頼するのか、行政への提出まで含まれるのかによって、事業所側で行う作業は変わります。
次のような点は、できるだけ契約前に確認しておくとよいでしょう。
- 行政への提出を誰が行うのか
- 行政からの連絡を誰が受けるのか
- 補正や追加資料への対応が含まれているのか
- 事業所側で作成・準備するものは何か
- どのような場合に追加費用が発生するのか
依頼範囲が曖昧なまま進むと、専門家側は「事業所が対応するもの」と考え、事業所側は「専門家へ任せたもの」と考えていた、という認識のずれが生じます。
2. 行政とのやり取りが共有されるか
行政手続では、申請内容について質問を受けたり、行政との調整が必要になったりすることがあります。
行政へどのような説明をするのかは、原則として事業所にも共有されることが望ましいでしょう。
ただし、行政との電話中に確認事項が増えるなど、その場で一定の回答をしなければならない場合もあります。すべてのやり取りについて、必ず事前確認を行えるとは限りません。
そのような場合でも、後から次の内容が共有されれば、事業所は状況を把握できます。
- 行政から何を確認されたのか
- どのように回答したのか
- 手続が現在どの段階にあるのか
- 追加で必要な対応があるのか
行政との連絡を専門家へ任せる場合でも、事業所が手続の状況を把握できる状態にしておくことが重要です。
3. 予定外の追加対応が生じたときの扱い
行政手続では、提出後に追加資料や説明を求められることがあります。
軽微な追加対応であれば、当初の業務範囲内で対応する場合もあります。一方で、書類の大幅な作り直しや追加調査など、相当な作業が必要になる場合は、別途費用が発生することもあります。
追加料金が発生すること自体が問題なのではありません。
重要なのは、追加対応が必要になった理由、誰が何を行うのか、期限はいつか、費用が生じるのかについて説明があることです。
事業所が状況を知らないまま手続が止まることのないよう、予定外の対応が生じた場合の進め方も確認しておく必要があります。
4. 必要資料の案内が分かりやすいか
指定申請など、必要資料が多い手続では、事業所側が複数の資料を準備しなければなりません。
必要資料を可能な限りまとめて案内してもらえれば、事業所側も準備の予定を立てやすくなります。
もっとも、手続を進めるなかで、当初は想定していなかった資料が必要になることもあります。行政から追加の確認を受けたり、提出資料から別の論点が見つかったりする場合があるためです。
追加資料が必要になったときは、次の点が説明されることが重要です。
- なぜ必要になったのか
- どの資料を用意すればよいのか
- いつまでに必要なのか
専門家側の確認不足が後から判明することもあり得ます。その場合に、責任の押し付け合いをするのではなく、必要な対応を整理し、速やかに修正できるかも、仕事の進め方を見るポイントです。
5. 業務終了時に結果が報告されるか
書類を専門家へ渡した後、手続がどこまで進んでいるのか分からないままになることがあります。
業務が完了した際には、少なくとも次のような事項が共有されることが望ましいでしょう。
- 何を提出したのか
- 行政で受け付けられたのか
- 補正や追加対応が残っていないか
- 事業所側で今後行うことはあるか
- 提出した書類やデータの控えを受け取れるか
提出した時点で業務が終了するのか、行政による確認が終わるまで対応が続くのかは、依頼内容によって異なります。
どの時点をもって業務完了とするのかも、あらかじめ確認しておくとよいでしょう。
予定外のことが起きたときに、仕事の進め方が見える
例えば、指定申請の提出後に、行政から追加資料を求められたとします。
追加資料が必要になること自体は、必ずしも珍しいことではありません。申請先の確認内容や個別の事業計画によって、当初想定していなかった資料が必要になる場合もあります。
このとき事業所が困るのは、追加資料が発生したことそのものではありません。
「なぜ必要なのか」「誰が用意するのか」「いつまでに必要なのか」が分からないまま、時間だけが過ぎることです。
専門家から状況、理由、役割分担、期限が共有されれば、予定外の対応であっても、事業所は次に何をすべきか判断できます。
外部専門家を選ぶ際に見るべきなのは、最初から一度も追加対応や確認不足が起きないかどうかだけではありません。
何かが起きたときに状況を説明し、役割を整理し、手続を止めずに最後まで対応できる相手かどうかが重要です。
継続的に相談するなら、質問のしやすさも軽視できない
障害福祉事業所の運営に関する相談では、人員配置、役職、勤務状況、利用者への支援方法など、事業所ごとの事情を確認しなければ適切に判断できないことがあります。
専門家から聞かれたことに答えるだけでなく、事業所側からも、分からない点や気になっている点を伝える必要があります。
そのため、継続的に相談する相手を選ぶのであれば、次の点も確認しておくとよいでしょう。
- 分からないことを質問しやすいか
- 事業所が理解できる言葉で説明されるか
- 意見が異なる場合に、その理由を説明してもらえるか
- 結論を出す前に、必要な事実関係を確認しているか
- 連絡の方法や頻度が事業所に合っているか
障害福祉制度では、同じように見える事例でも、勤務状況、一定の役職者が不在となる期間、代替体制、指定権者の取扱いなどによって、必要な対応が異なることがあります。
十分な事情を確認しないまま、最初から特定の変更届や手続が必要だと決めてしまうと、本来不要な対応を事業所へ求めることにもなりかねません。
ここでいう相談のしやすさは、単に話が合う、親しみやすいという意味だけではありません。
必要な情報を伝え、回答を理解し、事業所自身が判断できる関係をつくれるかという、実務上の問題です。
##自分たちに合う専門家を選ぶ
外部専門家の選び方に、すべての事業所に共通する一つの正解があるわけではありません。
実績を重視する事業所もあれば、連絡の早さ、訪問対応、説明の分かりやすさ、料金体系などを重視する事業所もあります。
複数の専門家から説明を聞き、自分たちの事業所に合う相手を選んでも問題ありません。能力や実績が十分であっても、連絡方法や仕事の進め方が合わないことはあります。
契約前の面談では、経歴や料金だけでなく、依頼範囲、行政との連絡方法、追加対応、業務終了時の報告など、具体的な進め方についても確認しておくことが大切です。
当事務所では、サービス管理責任者として障害福祉の現場に携わった経験を踏まえ、制度上の説明だけでなく、事業所内で実際にどのように対応するかまで整理することを重視しています。
行政から急な照会や追加資料の依頼があった場合も、まず内容と期限を確認し、事業所側で必要な対応と当事務所で行う対応を分けてお伝えします。
こうした仕事の進め方も含めて説明をお聞きいただき、事業所に合う相談先かどうかをご判断いただければと考えています。