コラム
書類が1枚足りなくて返戻になった理由の本質 ―「書類不足」に見えて、実はズレているもの―
書類が1枚足りないだけで返戻になる違和感
「書類が1枚足りないだけで返戻になった」「ちゃんと運営しているはずなのに、なぜ行政に認めてもらえないのか」
障害福祉の手続や届出に関わっていると、こうした場面に直面することがあります。制度改定や定期的な確認のたびに似たような返戻や差し戻しが起き、そのたびに修正はするものの、「なぜ返戻になったのか」が腑に落ちないまま終わってしまう。この感覚を抱えている事業所は、決して少なくありません。
返戻の理由は「書類不足」では終わらない
行政から示される返戻理由は、多くの場合「添付書類不足」「必要書類未提出」といった表現です。ただし、そこで起きているのは単なる枚数や様式の問題ではありません。
本質的には、自分たちが行っている運営や支援の内容を、第三者に説明・証明できる形で示せなかった、という点にあります。返戻を「書類が足りなかった」という結果だけで受け取ってしまうと、なぜ同じような指摘が繰り返されるのかが見えなくなります。
- 運営や支援の中身を、第三者視点で説明する意識が弱い
- 「行政に言われたから作る書類」という位置づけになっている
- その書類が何を証明するためのものかが整理されていない
- 日々の記録が、後から説明できる形で残っていない
こうした状態では、たとえ実態として適正に運営していても、「説明できない=確認できない」と判断されやすくなります。
「やっているのに認められない」状態が続くリスク
このズレを放置したまま対応を続けると、次のような状況に陥りやすくなります。
- 制度改定や確認のたびに、同様の返戻や差し戻しを繰り返す
- 行政対応に時間と労力を取られ、現場の支援に集中できなくなる
- 「ちゃんとやっているのに」という不満や不安だけが積み重なる
- 書類対応が後追い・場当たり的になり、運営指導で不利になる
返戻は単発のトラブルに見えて、実は事業運営全体の整理不足が表に出ているサインでもあります。
視点を変えると、返戻の意味が変わる
返戻を減らすために必要なのは、様式を完璧に揃えることではありません。大切なのは、「何を証明できなかったのか」という視点に立ち戻ることです。
実際、運営指導や行政確認で問われるのは、「その場で書類が出てくるか」だけでなく、日常の運営が、説明できる形で積み重なっているかどうかです。
この点については、「運営指導対策は“当日”ではなく“日々の運営”で決まる」 という観点から、こちらのコラムでも整理しています。
- 返戻を「書類不足」ではなく「証明できなかった結果」として捉える
- 書類の形よりも、その書類で何を説明するのかを意識する
- 決められた様式がなくても、事実関係が分かる記録を残す
- 口頭説明に頼らず、後から確認できる形で証拠を残す
- 日々の記録や書類を、行政への説明材料として整理する
この視点が共有されていれば、返戻や指摘は「突然降ってくるもの」ではなくなります。
当事務所のサポート
当事務所では、書類を揃えること自体を目的にするのではなく、運営の実態が行政にどう見えるか、どう説明されるか という観点から整理を行っています。
- 各書類について「何を証明するためのものか」の整理
- 行政に説明可能な記録・書類になっているかの確認
- 様式依存にならない、事実関係が伝わる書類構成の整理
- 返戻や指摘が起きやすいポイントの事前整理
- 運営指導や行政確認を前提とした全体構造のチェック
書類が1枚足りなかった、という結果だけで終わらせず、なぜ説明できなかったのか、どこで視点がずれていたのかを整理する。その積み重ねが、返戻や指摘に振り回されない運営につながります。
運営指導は「その場」ではなく「積み重ね」で見られている
運営指導や行政確認の場で問われるのは、その時点で書類が揃っているかどうかだけではありません。日々の運営や支援が、継続的に・一貫して行われてきたか。そして、それを後から確認できる形で説明できるかどうかが見られています。
返戻や差し戻しが起きる背景には、書類の不足という結果以上に、「説明の前提となる整理が足りていない」状態が潜んでいることが少なくありません。
書類を作ること自体が目的になると、制度改定や確認のたびに対応が後追いになります。一方で、「この書類で何を証明するのか」という視点で運営全体を整理しておけば、運営指導や行政確認は、必要以上に構えるものではなくなります。
返戻をきっかけに、その場しのぎで書類を整えるのか。それとも、次の確認を見据えて、運営と記録の関係を整理し直すのか。この差が、指摘の出にくい運営につながっていきます。