行政書士 巽良太事務所

コラム

「困った職員」への対応に、利用者支援の工夫を活かす

「困った職員」への対応に、利用者支援の工夫を活かす

「仕事ができない職員がいる」という相談

先日、ある事業所から、

「仕事ができない職員がいて、どうしたらいいでしょうか」

という相談を受けました。

詳しく話を聞いていくと、

  • 口頭で説明しても、十分に伝わっていないことがある
  • 理解できていなくても「わかりました」と返事をする
  • 複数のことを頼むと抜けてしまう
  • 何度説明しても、同じようなところでつまずく

といった状況がありました。

もちろん、本人の経験や能力の問題である可能性もあります。

ただ、話を聞きながら気になったのは、

「本人にどう伝えているのか」

ということでした。

そこで、指示の出し方を少し変えてみてはどうかとお伝えしました。

口頭で伝わらないなら、見える形にしてみる

たとえば、複数の仕事を口頭でまとめて伝えるのではなく、一つずつ分けて伝える。

作業の順番があるのであれば、

①Aの作業をする→②終わったら○○さんに報告する→③Bの作業をする

というように、順番を見える形にする。

毎日繰り返す仕事であれば、チェックリストにしてしまう。

「早めにお願いします」ではなく、「今日の15時までにお願いします」と期限を具体的にする。

完成形が分かりにくい仕事なら、見本を示す。

こうして伝え方を具体的にしたうえで、次に確認したいのが「本当に伝わったか」です。

「わかりましたか?」

と聞いて「わかりました」と返ってきても、こちらが伝えた内容と本人の理解が一致しているとは限りません。

その場合は、

「では、このあと何をするか、一度教えてください」

と聞いてみる。

そうすれば、どこまで伝わっていて、どこでずれているのかが分かります。

この方法、どこかで見覚えがありませんか?

ここまでの話を読んで、

「これ、どこかで見たことがあるな」

と思った方もいるかもしれません。

そうです。

障害福祉の現場では、利用者支援でよくやっていることです。

利用者さんに対しては、

  • 一度にたくさん伝えない
  • 手順を分ける
  • 写真や図を使う
  • 見通しを示す
  • 曖昧な表現を避ける
  • 本人が理解しやすい方法に変える

といった工夫を日常的に行っています。

「できないので、もう一度同じ説明をする」

だけではなく、

「どうすれば、この人には分かりやすいだろう」

と考えます。

ところが、相手が職員になると、

「一度説明したのだから分かるはず」

「社会人なのだから自分で考えてほしい」

となりやすい。

利用者さんと職員では、もちろん立場も求められるものも違います。

ただ、伝え方を工夫するという考え方まで変える必要はないと思います。

支援で使われている「構造化」という考え方

たとえば、発達障害のある方への支援では、物事を分かりやすく整理し、見通しを持ちやすくするために「構造化」という考え方が使われることがあります。

何をするのか。 どの順番でするのか。 どこまでできれば終わりなのか。

こうした情報を、本人の頭の中だけで整理してもらうのではなく、文字や図などを使って外に出して分かりやすくします。

こうした工夫は、診断名のある人だけに使うものではないと、私は考えています。

新人職員にも使えますし、複数の仕事を整理するのが苦手な職員にも使えます。

「口頭で伝わらないなら、書いてみよう」 「順番が分からないなら、順番を示してみよう」 「曖昧な指示で動けないなら、具体的にしてみよう」

障害の有無を前提にしなくても、目の前で起きていることに合わせて、伝え方を工夫することはできます。

仕事の作り方にも目を向けてみる

職員がうまく仕事をできないとき、

「本人の能力が足りない」

と考えるのは簡単です。

実際に、そういう場合もあります。

ただ、

  • 指示の内容が曖昧だった
  • 複数の仕事を一度に伝えていた
  • 完成形が共有されていなかった
  • 優先順位が明確になっていなかった

のであれば、それだけで本人の問題だと言い切るのは、まだ早いかもしれません。

一度、仕事を分かりやすい形に整えてみる。

それでできるようになるなら、その方法を続ければいい。

それでも難しいのであれば、その段階で業務内容や役割、配置などを考える。

この順番で見た方が、問題を整理しやすくなります。

利用者支援の工夫を、職員指導にも活かす

障害福祉の現場には、人に合わせて伝え方を変えたり、環境を整えたり、物事を分かりやすく構造化したりする工夫があります。

普段は利用者支援の中で使っているものです。

その中には、職員指導や業務の整理にも活かせるものがあります。

職員が何度も同じところでつまずくとき。

新人が仕事をなかなか覚えられないとき。

指示したはずなのに、思ったように伝わっていないとき。

本人に伝えるべきことは、もちろん伝える必要があります。

それと同時に、

「この仕事、もう少し分かりやすくできないか」

と考えてみる。

職員指導がうまくいかないとき、本人への伝え方だけでなく、仕事そのものの見せ方や組み立て方を変えてみる。

利用者支援では普段から行っているその発想を、職員指導にも少し活かしてみてもよいのではないでしょうか。

もちろん、伝え方や業務の組み立てを変えても、必要な仕事ができないことはあります。

その場合は、業務内容や役割、配置などを別の問題として考えていくことになります。

当事務所では、障害福祉事業所の運営支援の中で、職員への指示方法や業務の整理、現場で起きている問題についてのご相談もお受けしています。

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