
コラム
「こだわり」って良くないこと? 支援現場で考えたいこと
「こだわり」という言葉
「こだわり」という言葉は、いろいろな意味で使われます。
ファッションへのこだわり、食へのこだわり、道具へのこだわり。
普段の生活では、好みや、その人が大切にしているものを表す言葉として使われることもあります。
一方、障害福祉の支援現場では、
「この方はこだわりが強い」
と、支援上の課題を表す言葉として使われることがあります。
同じ「こだわり」という言葉でも、使われ方は少し違います。
コップのこだわり
私が支援現場にいたころ、いつも同じコップを使いたがる利用者がいました。
いつも同じコップを使いたいということ自体は、特に問題ではありませんでした。
ただ、他の利用者がそのコップを使っていると、大きく乱れることがありました。
同じコップを使いたいこと自体ではなく、希望どおりにならなかったときに、その後の生活や活動にまで影響が出ていました。
「この方はコップへのこだわりが強い」
と表現することはできます。
ただ、それだけでは実際に何が起きているのかまでは分かりません。
夏でも冬服を着るこだわり
夏になっても、冬服やジャケットを着たがる利用者もいました。
本人はその服を着たい。
しかし、真夏に厚着を続ければ、体調を崩す危険があります。
汗や衣服のにおいが強くなり、周囲の利用者にも影響が出ていました。
当時は、夏服へ切り替える必要があることを何日もかけて説明しました。
暑いから夏服に替えよう。
涼しくなったら、また冬服を着よう。
そんな説明を繰り返し、最終的には夏服へ切り替わりました。
ただ、本人が納得して切り替えたのか、何日も言われた結果だったのかはわかりません。
今なら、こんなことも試してみる
今、同じ場面に出会ったとしても、説明は続けると思います。
ただ、説明するだけではなく、ほかの方法も試してみます。
例えば、
- カレンダーに、また冬服を着る時期を書いて見せる
- 朝や入浴後の着替えのときに、季節に合った夏服をあらかじめ用意してみる
- 暑い時間帯や外出時だけ脱ぐなど、「着る・着ない」の二択以外の方法を試す
- 似た形や感触の薄手の服で代わりにならないか試してみる
といったことです。
こうした方法を試しながらも、真夏の厚着で体調を崩す危険が高くなっているのであれば、本人が希望していても、安全を優先して脱いでもらったり、着替えてもらったりする場面はあると思います。
こだわりって良くないこと?
同じコップを使いたい。
夏でもジャケットを着たい。
それだけで、直すべき「悪いこだわり」と考える必要はないと思います。
一方で、そのことで本人の生活に大きな支障が出たり、健康や安全に問題が出たり、周囲の人に具体的な影響が出たりするのであれば、支援として何かを考える必要があります。
そのときに少し立ち止まって考えたいのは、
「誰が、どう困っているのか」
ということです。
本人自身が困っているのか。
周囲の利用者に影響が出ているのか。
それとも、支援者にとって予定どおり進めにくいことを、本人の「こだわりの問題」にしていないか。
もちろん、実際の支援現場では、本人のことだけを考えれば済むわけではありません。
安全や衛生、ほかの利用者との生活など、考えなければならないことがあります。
私自身も、支援現場にいたころは、こうした場面でどうするのがよいのか頭を悩ませました。
だからこそ、
「こだわりだから直す」
でも、
「本人の意思だから、何が何でも希望どおりにする」
でもなく、
その人にとって、その行動にはどんな意味があるのか。
実際に何が起きているのか。
この人には何を試せそうか。
支援では、そういったことを一つずつ考えていくことが大切だと、私は考えています。