コラム
加算・制度対応を外部に任せることで起きる、見えないリスク ― 不安が消えないのではなく、問題に気づけなくなる ―
制度対応が分からず、外部に任せたくなる
障害福祉の制度対応は、年々複雑になっています。 加算、配置基準、算定要件、実績報告、行政通知。
現場運営と並行してすべてを把握するのは簡単ではなく、「専門家に任せたい」と感じるのは自然な流れです。
その結果、
- 加算申請
- 各種届出
- 行政提出書類
を外部に委託する事業所は少なくありません。
外部委託=問題なし、になりやすい理由
外部に依頼すると、書類は整い、提出も滞りなく進みます。
- 申請は通っている
- 書類不備は指摘されていない
- 行政から特段の連絡もない
この状態が続くと、「専門家に任せているから問題ない」「指摘がない=適正にできている」という認識が生まれやすくなります。
※具体的な「処遇改善加算のよくある勘違い/つまずきポイント」は処遇改善加算のよくある勘違いと、運用でつまずきやすいポイントも参考にしてください。
しかし、この安心感は、必ずしも制度上の安全性と一致しません。
不安が消えないのではなく、問題に気づけなくなる
制度対応を外部に任せている事業所では、そもそも「不安を感じる機会」自体が減っていきます。
- どこが要件の分岐点なのか
- 何が起きると基準違反になるのか
- どの変更が影響するのか
こうした判断材料が、事業所側に十分共有されないまま運用が続くためです。
その結果、「行政書士に任せているから問題なし」「外部に出しているから大丈夫」と思っている一方で、実際には基準違反や要件未達が起きている、という状況が生まれます。
※運用上の「見えない負担や経費改善」については知らないまま損していませんか? - 処遇改善加算の“見えない負担”と経費改善もご覧ください。
不安が消えているのではなく、問題に気づけない状態になっている、という方が実態に近いケースもあります。
書類作成と制度判断が切り離されるリスク
外部委託の多くは、
- 書類作成
- 申請・届出の代行
までを業務範囲としています。
一方で、
- なぜその運用で要件を満たすのか
- どの前提条件で成り立っているのか
- どこが崩れるとアウトなのか
といった制度判断の部分は、事業所側が把握しないままになりがちです。
書類は通っている。しかし、制度理解が伴っていない。
※実務的なチェックポイントは気づかないまま“要件未達”に? - 処遇改善加算を正しく算定するためのポイントも参考に。
このズレは、運営指導や体制変更のタイミングで表面化しやすくなります。
人の入れ替えで、静かに基準から外れる
この構造が最も問題になりやすいのが、職員の退職や配置変更があったときです。
- 以前は要件を満たしていた
- 体制が変わったが、制度対応はそのまま
- どこで再確認すべきか分からない
こうしたズレは、日常業務の中では見えにくく、行政確認や運営指導で初めて指摘されることがあります。
「悪意はない」「意図的ではない」
それでも、是正対応・返戻・返還といった結果につながる可能性は残ります。
外部委託を否定する話ではない
ここで重要なのは、外部委託そのものを否定することではありません。
問題は、
- 何を外部に任せているのか
- 何を事業所側が理解しているのか
この線引きが曖昧なまま、「全部任せているつもり」になってしまう点です。
外部委託は、申請補助・整理補助として非常に有効です。
ただし、制度判断まで丸ごと手放してしまうと、事業所自身がリスクに気づけなくなります。
当事務所のサポート
当事務所では、加算や各種制度対応について、単なる書類作成にとどまらない整理を行っています。
- 制度要件と現場運用の関係整理
- どこまでが安全で、どこから注意が必要かの可視化
- 人員変更・体制変更時の再確認ポイント整理
- 行政確認が必要な場面の切り分け
外部に任せているから安心、ではなく、事業所自身が状況を把握し、気づける状態を保つことを前提に、制度対応全体の整理をサポートしています。
制度対応は「任せる」ではなく「把握できる状態」をつくる
制度対応をすべて自前で行う必要はありません。外部の力を借りること自体は、合理的な選択です。
ただし重要なのは、事業所自身が「今の運用が、どの前提で成り立っているのか」を把握できているかどうかです。
- この配置だから要件を満たしている
- この運用を崩すと加算に影響が出る
- ここが変わったら、再確認が必要になる
こうしたポイントが見えていれば、人の入れ替えや体制変更があっても、「気づかないまま基準から外れる」リスクは大きく下げられます。
当事務所では、書類を作って終わりの制度対応ではなく、事業所が自分たちで判断・確認できる状態を保つための整理を重視しています。
外部に任せているのに、なぜか不安が残る。指摘されて初めて問題に気づく。
そんな状態から一歩離れ、制度と現場の関係を落ち着いて把握したいと感じたときは、一度、今の運用を整理してみることをおすすめします。